8/9 院内勉強会「投球障害の初期評価とファンクショナルスローイングテスト」について
今回は、「投球障害の初期評価とファンクショナルスローイングテスト」について、勉強会をしました。
当院では、投球障害の初期評価として①肩関節(原テスト)と②下肢に分けて2つの評価を実施しています。
①肩関節評価(原テスト)
肩甲上腕関節、肩甲胸郭関節の柔軟性、周囲筋の筋力評価、安定性評価や機能評価を合わせて11項目で評価します。各テスト陰性だった場合を1点とし、全項目を実施して9点以上で投球再開の基準としています。(原 正文.投球肩障害の診察法(メディカルチェッ クを中心として).骨・関節・靱帯.2007)
②下肢柔軟性評価
・下肢挙上テスト(SLR):ハムストリングスの柔軟性の評価です。仰臥位で膝関節を伸ばしたままで下肢を挙上します。股関節屈曲90°を目指します。
・指床間距離(FFD):下肢後面と体幹部の柔軟性の評価です。立位で膝関節を伸ばしたまま前屈します。床に手指がつく状態を目指します。
・踵殿間距離(HBD):大腿四頭筋の柔軟性の評価です。うつ伏せで膝関節を曲げて踵が殿部に着く状態を目指します。
・股関節内旋可動域(HIR):股関節内旋可動域の評価です。股関節屈曲90°の位置で股関節の内旋可動域を診ます。最低でも30°以上を目指します。
これらの目標値に達していない場合、投球動作の運動連鎖の中で下肢や体幹部での動きに制限が起き、肩・肘関節に加わる負担が大きくなります。特に、投球機会の多い投手ではこの評価が欠かせません。
ファンクショナルスローイングテストとは、投球動作を4つフェーズに分類し、各フェーズごとに姿勢や動きを観察し問題点を抽出する方法です。初期評価による問題点を改善した上で、動作の中での動きを評価、修正するためのものです。具体的には、フェーズ毎の姿勢を模倣した簡易動作を行い、その動作に必要な筋力や柔軟性が備わっているかを評価します。
治療では、望ましい動きを繰り返し行い、定着させ、その上で実際の投球動作の中で改善できているかを確認します。
初期評価で機能に問題がない場合でも、投球の動作の中に不良動作がみられる場合もあります。そういった場合に動作学習としても実施します。
投球動作は、運動連鎖と表現されるように、下肢から始動し、上肢に力を伝えていく動作の連続です。このため、肘・肩関節機能に加えて下肢機能の評価も欠かせません。
また、ストレッチや筋力強化で局所や下肢の機能が改善しても、実際の投球動作でこれらの改善が活かせていないことがあります。こういった時にこそ、ファンクショナルスローイングテストを実施することで、どのフェーズの不良動作が原因かを把握しやすく、スムーズな改善と復帰につながると考えます。
投球障害の方々に適切なリハビリテーション治療を提供できるよう、今後も研鑽に努めてまいります。投球時の痛みでお悩みの方は、ぜひ一度来院していただければと思います。
理学療法士 高石 憲太