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10/31 院内勉強会「内側型野球肘のリハビリテーション」について

[2023.10.31]

こんにちは。理学療法士の高石です。今回は「内側型野球肘のリハビリテーション」について勉強会を行いました。

内側型野球肘は、野球肘の中でも最も発生頻度が多く、特に投手や捕手が受傷することが多いです。年齢や骨の成長状態によってストレスのかかる部位が異なり、障害されやすい部位が異なります。

・12〜13歳 内側上顆骨端線部

内側上顆の骨化が未熟なため、内側上顆下端の骨端軟骨が最脆弱部となるため骨端線での障害が起きます。

・14〜15歳     尺骨鉤状結節付着部

内側上顆の骨端線が閉鎖すると、遠位付着部である尺骨鉤状突起結節での障害が起こりやすくなります。

・17〜18歳以降 内側側副靱帯(MCL)

内側上顆や尺骨鉤状突起結節の付着部が強固となり、靱帯実質部での変性断裂がみられるようになります。

投球動作において内側型野球肘の発症につながるポイントは、早期コッキング〜後期コッキングの相です。この相で肩関節は最大外旋位(MER)となり、肘関節に強い外反力がかかります。この外反力に抵抗するのが内側支持機構(円回内筋、橈・尺骨手根屈筋、浅指屈筋、MCL)ですが、不良動作を繰り返すことによる損傷や支持機能の低下が内側型野球肘につながります。

今回は投球動作における相ごとの不良動作の評価法と治療法について勉強しました。

①Wind up ~ foot plant:脚をあげた時に骨盤後傾になっていないか?

動作の始動である、Wind up ~ foot plantにかけての相では、骨盤中間位から前傾位での接地が望ましいです。この相で骨盤の後傾が出現すると、その後の動作で体幹の早期回旋や非投球側方向への体幹傾斜が生じやすくなります。

この場合、骨盤前傾〜中間位を維持した状態でのランジ等、投球動作学習をしていきます。

②Foot plant(FP):FP後にステップ下肢側の膝関節が屈曲し続けていないか?

FPでステップ下肢が固定されることによって、体幹に慣性力が生じ、ステップ下肢への体幹の重心移動を円滑にすることが可能となります。FP後に膝関節が屈曲し続けるフォームでは、この重心移動が流れます。

 この場合、ランジ動作に様々な方向へのジャンプを加えた中で下肢の固定性を意識するトレーニング等でステップ下肢の固定性向上を図ります。

③Early cooking~MER:骨盤の回旋と一緒に上部体幹が回旋していないか?

この相での理想的な投球動作は、骨盤の回旋に遅れて上部体幹が回旋してくる動作です。骨盤帯と体幹が一塊となって回旋すると、相対的に肩甲上腕関節は過度な水平外転位を強いられます。この結果、投球側上肢の運動に遅れが生じ、最終的に肘を突き出すようなBR(ボールリリース)を迎えやすくなります。

この場合は、まず肩関節外旋、胸椎伸展、肩甲骨後傾、骨盤前傾、股関節伸展などのMER時に必要な可動域の拡大を図ります。さらにMERの肢位での骨盤と体幹部の分離を促す動作学習を行います。また、肘外板ストレスに抗する動的安定化機構としての前腕筋群の強化とMER時に必要な強直なボール把持力獲得のための手指の筋力強化も重要です。

④ Boll release ~ follow through:follow throgh期での体幹の回旋が早期に終了していないか?

BR~followthrough期は、骨盤回旋動作と股関節の内旋可動域が重要です。ステップ脚が接地する前に骨盤・体幹が早期に回旋してしまっている場合、BR~follow throgh期に移行する頃には体幹の回旋が終了してしまい、骨盤・体幹の回旋の力を伝えられず上肢に頼ったBR、いわゆる"手投げ"となっていることが多いです。さらに、股関節の内旋制限があると、follow throgh期の骨盤の回旋に制限が生まれる。

この場合は、BR~followthroughの相での骨盤回旋動作の動作学習と、ステップ側の股関節内旋可動域の改善が必要です。

今回の勉強会では各相ごとに起こり得る不良動作やその動作の修正について学びました。投球動作は、重心の並進運動を回転運動に変換し、下肢から上肢への運動連鎖によって成り立つ連続、かつ複雑な動作です。このことから、不良動作のみに着目せず、それ以前の動作を振り返ることの重要性を学びました。もし投球による痛みでお困りの方がいらっしゃいましたらぜひ当院にお越しください。適切なリハビリテーションを提供できるよう頑張ります。

よろしくお願いいたします。

             

理学療法士 高石

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