5/31 院内勉強会「肘関節と手関節のリハビリテーション」について
今回は、「肘関節と手関節のリハビリテーション」について勉強会をしました。
当院でリハビリテーション対応することの多い肘関節疾患には、外側上顆炎、野球肘があり、手関節疾患には、橈骨遠位端骨折後の拘縮があります。今回そのリハビリテーションについて学びました。
A、外側上顆炎
外側上顆炎は、スポーツ動作や日常生活で上腕骨外側上顆に付着する筋肉が炎症をきたし、圧痛、運動時痛をきたす疾患です。遷延化することも多く、痛みが持続して安静時痛、夜間痛が出現することもあります。主に、30~50歳代に好発し、それ以下での若年層では頻度が少ないです。「テニス肘」とも言われ、テニスプレーヤーにおける発生率が高く、特にテニスのバックハンドストロークの時のストレスが発症につながる事が多いです。しかし、テニスだけでなく、重量物の運搬や、料理でのフライパン操作など、仕事や日常生活動作の中でも発生することが多く、総数では、テニス以外の発症の方が多いことがわかっています。また、肩甲骨の固定性や肩関節の可動性も外側上顆に掛かる負担を減らすために重要です。
リハビリテーションでは、次の順に進めていきます。
①消炎、鎮痛:まず、筋肉リラクゼーション、超音波、体外衝撃波等により局所の消炎と鎮痛を図ります。
②局所の機能改善、筋力強化:局所の炎症が落ち着いたら、硬化した筋の柔軟性、筋力の改善を図ります。
③肩甲帯~体幹の機能改善:中枢に位置する肩甲帯の機能低下により上肢末梢の負担が増大し、外側上顆炎の発症につながっている場合があります。このため、肩甲胸郭関節の可動性拡大と肩甲〜体幹部の固定性の改善をはかります。
④把握動作の修正:手の母指側を主に使う動作が、外側上顆への負荷につながっている事があり、環指〜小指の筋力強化、動きの改善を図ることで、負荷の分散につながります。外側上顆に負担の掛かりにくい握りや、把持動作などの訓練もしていきます。
B、野球肘
野球肘は障害される部位で①内側型・②外側型・③後方型の3つに分けられます。
①内側型:コッキング期から加速期に肘関節に掛かる外反ストレスにより生じますが、病態は成長期(10〜16歳)か、成人期(17歳〜)かで大きく分けられます。
骨端線未閉鎖の成長期では、上腕骨内上顆の分節化(裂離)や内側上顆骨端線閉鎖不全などが起きます。骨端線閉鎖後の成人期では、骨ではなく、内側支持機構全体に負担がかかり、内側側副靱帯の変性や部分断裂がみられます。
②外側型:主に問題になるのは、離断性骨軟骨炎(osteochondritisdissecans:OCD)です。ボールを投げる時(後期コッキング期)で不良なフォーム(肘下がり)により上腕骨小頭と橈骨頭の衝突が繰り返されることで発症します。
③後方型:ボールリリースからフォロースルー期にかけて、肘関節内反+伸展が強制されることで肘頭、肘頭窩の骨性衝突(インピンジメント)を生じることで発症します。重症化すると、疲労骨折にいたることもあります。
治療は、②の離断整骨軟骨炎では手術になることも多いですが、それ以外ではリハビリテーションが中心になります。
リハビリテーションでは、まず局所の炎症の改善を図ります。さらに、肘関節の機能改善に加えて肩関節、肩甲帯、体幹、下肢の機能改善を図り、投球時の不良動作修正をおこないます。
C、橈骨遠位端骨折後の拘縮
橈骨遠位端骨折は、小児ではスポーツ、青壮年の男性は転倒、転落、交通事故、40歳以上の女性は骨粗鬆症に伴う脆弱性骨折として発症します。治療は、年齢、ずれの程度、不安定性などを考慮して、保存療法(ギブス、シーネ固定)もしくは手術(プレート固定)から選ばれます。保存、手術のどちらの治療においても、一定の固定期間があり、その間に軟部組織の癒着や柔軟性低下による関節拘縮が起きます。固定期間により生じた手関節や手指の拘縮改善のために、リハビリテーションが必要になります。リハビリテーションでは、徒手操作と超音波や体外衝撃波等を用いて消炎や癒着の改善をはかります。さらに、ホームエクササイズも含めた手関節、手指の運動療法を行い骨折前の機能回復を目指します。
肘関節や手関節のリハビリテーションでは、ご自宅で行なっていただくホームエクササイズは欠かせません。早期の機能回復のためには、ホームエクササイズの頻度や時間を十分にかけることが必要です。また、肘関節疾患では局所だけでなく肩甲帯や肩関節の機能も重要で、野球肘では体幹部の固定性や下肢の関節可動域、安定性が重要だと考えます。
これからも皆さまの力になれるよう学び、学びに基づいた治療を頑張ります。よろしくお願いします。
理学療法士 高石