3/26 院内勉強会「投球動作におけるインターナルインピンジメントのリハビリテーション」について
こんにちは。理学療法士の高石です。今回は「投球動作におけるインターナルインピンジメントのリハビリテーション」について勉強会をさせて頂きました。
インターナルインピンジメントとは、投球時に上腕骨頭と関節窩の間に腱板組織や靱帯が挟み込まれる現象のことをいいます。主に、投球時に障害を生じやすい相や損傷する部位で前上方関節内インピンジメント(Anterior superior internal impingement :ASI)と後上方関節内インピンジメント(Posterior superior internal impingement:PSI)に分けられます。
前上方関節内インピンジメントとは、early cocking phaseでの水平外転、内旋時、followthrough phaseでの水平内転、内旋位で、腱板(肩甲下筋腱・棘上筋腱)、上腕二頭筋長頭腱(LHB)、上関節上腕靱帯(SGHL)が関節窩前上方部で上腕骨頭と関節窩縁に挟まれて起きます。後上方関節内インピンジメントとは、lete cocking phaseから acceleration phase へ移行する瞬間に肩関節が外転かつ最大外旋位となった時に上腕骨頭と関節窩後上方部の間に腱板(棘上筋や棘下筋)が挟み込まれることで起きます。共に繰り返す負荷で、関節包側不全断裂や関節唇損傷が生じます。
今回の勉強会では、ASIとPSIが好発する投球動作の相ごとに評価方法とリハビリテーション法を紹介させて頂きました。
①前上方関節内インピンジメントの評価とリハビリテーション
early cocking phase
痛みの再現:肩関節を内旋位で挙上させた時にどの角度で痛みがでるか?、肩関節の動きに追従して肩甲骨を挙上をアシストした時に痛みの軽減はみられるか?、を確認します。
機能評価:肩関節の外転、内旋と肩関節内旋位での外転可動域と肩甲骨内転に伴う体幹部の後方への回旋可動域。肩甲骨の挙上と上方回旋、それに伴う同側の体幹部の伸張性を評価します。
リハビリテーション:機能評価で制限があった可動域に対してのストレッチングや筋力強化を行います。
Fllow through phase
痛みの再現:さまざまな挙上角度で肩関節を他動的に内旋させることでどこで痛みがでるのか?、肩関節内旋位で肩甲骨を他動的に後傾または前傾した時で痛みの有無はあるか?、を確認します。
機能評価:肩甲骨の外転および前傾の可動性を評価します。
リハビリテーション:肩甲骨外転・前傾を含む体幹屈曲・前方回旋方向へのストレッチや腹斜筋を使いながらの肩甲骨外転・前傾のトレーニングを行います。
②後上方関節内インピンジメントの評価とリハビリテーション
late cocking phase
痛みの再現:ゼロポジション(投球側の肩甲棘と上腕骨が並行になっている状態)で肩甲上腕関節の角度を前額面上や水平面上で変えながら他動的に外旋させ痛みを確認します。
機能評価:ゼロポジションでSSEライン(両肩と投球側の肘を結んだ線)が一直線となっているか?、ゼロポジションでの肩関節外旋可動域が十分か?、を評価します。また、胸椎の伸展や肩甲骨の後傾が出ているか?、も確認します。
リハビリテーション:ゼロポジションでの外旋筋力の強化、や肩甲骨の後傾と体幹の伸展を同時に促すエクササイズ等を行います。
acceleration phase
痛みの再現:late cocking phaseと同様の肢位で内旋の等尺性筋収縮を行わせた場合に痛みや出力の低下はあるか?、肩甲骨の固定を介助することで痛みが消失または軽減するか?、を確認します。
機能評価:ゼロポジションをキープして肘関節の伸展が行えるか?を評価します。
リハビリテーション:ゼロポジションでの肘関節伸展筋力トレーニングなどを行います。
今回の勉強会では、動作における肩や体幹部の可動域と筋力の評価からリハビリテーションでの機能改善までを示し、スタッフ間で共有することができました。
また、局所の改善だけでなく、投球動作で肩関節への負荷が増大する前の段階で体幹部や股関節の可動性や固定性も重要だというのを再確認しました。
投球における肩の痛みがある方はぜひ、ご相談ください。当院は、野球肩に対するリハビリテーションも積極的に対応しております。
理学療法士 高石