5/9 院内勉強会「股関節のリハビリテーション」について
こんにちは。理学療法士の尾又です。今回は「股関節のリハビリテーション」について勉強会を行いました。
当院で対応する股関節疾患は、主に股関節周囲炎、変形性股関節症、大腿骨寛骨臼インピンジメント症候群、弾発股、グロインペイン症候群などです。今回は、各疾患の病態、評価、リハビリテーションについて確認しました。
股関節疾患のリハビリテーションでは、病態、股関節の構造上の特徴に合わせて実施することが大切です。股関節の特徴をいくつか挙げたいと思います。
①可動性
股関節は、多方向(前後・内外・回旋)に動くことが出来る関節です。人間の体には、動くことを求められる関節と、安定性を求められる関節があり、それらが交互に配置されているという法則(ジョイント バイ ジョイント セオリー)があます。この中で股関節は、可動性が求められる関節と位置付けられています。隣接する腰椎・膝関節は、安定性が求められます。
②骨盤大腿骨リズム
日本人の股関節の屈曲可動域は平均133°です。寛骨大腿関節の骨性屈曲可動域は平均93°ですが、軟部組織による制限の影響で実際の屈曲可動域は平均70°です。この133°と93°の差は、骨盤の後傾と腰椎の後弯による差であり、股関節の可動性向上を目指すためにはこの骨盤と腰椎の可動性をを併せて改善察せる必要があります。
③骨頭の骨性被覆と関節包靭帯の働き
股関節は、大腿骨骨頭と寛骨の臼蓋により構成されており、臼蓋が大腿骨の骨頭を覆う受け皿のようになっています。股関節は荷重がかかる関節のため、覆う面積(骨頭の被覆)が大きいほど1点にかかる荷重は分散します。逆に覆う面積が小さいほど1点にかかる荷重は大きくなり、関節に負担がかかり、かつ不安定になります。骨頭の被覆は股関節の肢位により変化し、立位姿勢では骨頭前方の被覆が下がり、屈曲90°、軽度外転位で被覆が最も高くなります。一方、股関節の周囲を関節包靱帯(腸骨大腿靭帯・恥骨大腿靭帯・坐骨大腿靭帯)が覆っていますが、この関節包靱帯は屈曲位で緩み、立位で捻れて緊張が高まります。骨性被覆と関節包靱帯がお互いを補うように働き、股関節の安定に寄与しています。
④股関節の求心位
大腿骨頭が臼蓋の中で適切な位置(求心位)に保たれている状態が重要となります。動作時にもこの求心位が保持されている必要があり、そのために重要であるのが股関節のインナーマッスル(深層外旋6筋、小殿筋、腸腰筋)です。インナーマッスルが働きが悪かったり、アウターマッスルとのバランスが悪いと求心位不良が起きてしまいます。また、後方の関節包や靭帯、筋肉などが硬くなり骨頭を前方に押し出してしまったりしても関節の求心位不良は起こり、動作時の痛みや可動域の制限につながります。
リハビリテーションでは、これらの特徴を念頭に、筋や関節包靱帯の柔軟性と伸張性を改善し、骨頭の位置を修正し、筋力強化による求心性の改善、運動学習や動作練習による再発予防を行います。対象となる組織として、股関節の殿筋群、腸腰筋、大腿直筋、大腿筋膜張筋、内転筋群、股関節関節包、腸骨大腿靭帯、恥骨大腿靭帯、坐骨大腿靭帯、隣接する腰部の多裂筋や腸腰靭帯、腹横筋などが挙げられます。評価により病態を把握し、原因と思われる組織に対しストレッチ、靭帯・関節包の伸張操作を行い、柔軟性を改善し、可動域の拡大を図ります。筋力強化では、クラムシェルエクササイズ、逆クラムシェルエクササイズ、ニーリフトなどでインナーマッスルの強化で求心位の改善を図り、さらにドローインやブレーシングで骨盤の安定性の改善を図ります。動作練習では、生活様式に合わせた動作、スポーツ競技に合わせた動作獲得を行います。リハビリテーションでは、ご自宅で行なっていただくホームエクササイズも欠かせません。
股関節でお困りの方いらっしゃいましたら、ぜひ当院に相談ください。適切な評価とリハビリテーションで、症状の早期改善、再発予防に努めてまいります。よろしくお願い致します。
理学療法士 尾又