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やっぱり動かすことが大切なのですね

[2022.03.09]

”Physical Therapy versus Glucocorticoid Injection for Osteoarthritis of the Knee”という論文を読みました。2020年4月にThe New England Journal of Medicineという権威ある医学雑誌に掲載された、アメリカ、テキサス州の陸軍病院のDeyle先生の論文です。膝の変形性関節症の患者さん各78名に対する理学療法と関節内ステロイド注射の効果を比べています。理学療法は、当院でもおこなっている理学療法士によるストレッチ、可動域訓練、筋力強化です。注射は、ステロイド(ケナコルト)と局所麻酔薬(キシロカイン)を膝の関節内に注射するもの。こちらに関しては、強い効果がありますが、リスクもあり、日本ではよりマイルドなヒアルロン酸の関節内注射が一般的です。治療開始後1年間の評価を比較しています。項目は、WOMAC(膝関節の痛みと機能の評価尺度)、患者自己評価、機能性評価、TUG歩行テスト、踏み台昇降テストです。その結果は、WOMAC、TUG歩行テスト、踏み台昇降テストにて理学療法の効果が高いことが示されています。特にWOMAC評価のグラフのように4週での効果は同様に有効ですが、その後1年にかけて理学療法(青い線)の方が高い改善効果を示しています。

理学療法は、通院時の理学療法士によるストレッチ、可動域訓練による動きの改善と、さらにホームエクササイズの指導をおこなっています。このホームエクササイズを無理のない範囲で継続し続けることが、理学療法の有効性を更に高めると考えています。実際、当院に来院される方々の中でも、自宅でしっかりエクササイズを継続していることを自信を持って話される方のほうが、良くなっている印象があります。

最近同じ病院から発表された新たな論文”Cost-effectiveness of Physical Therapy vs Intra-articular Glucocorticoid Injection for Knee Osteoarthritis”では、この理学療法と関節内ステロイド注射の費用を各グループ78名、1年間の治療で比較しています。理学療法8回分の費用は557-919ドル、1回の注射費用は99-172ドル。アメリカでの比較ですので、ここ日本の健康保険での金額と比べるとそれぞれ非常に高額な金額になっていますね。それでも、1年間での費用対効果(必要に応じて治療を行い、改善効果で補正した数値)では、両グループともに約2100ドルで差がない結果だったとのこと。QOL(日常生活の質)の指標で補正した結果では、理学療法群の方がより良い改善が得られていて、1年間の調査期間中に手術になった患者さんの数は理学療法グループでは0人、関節内ステロイド注射のグループでは4人という結果です。理学療法の方が、コスト的に優れていて、QOLを改善し、手術も避けられるという結果です。

この2つの論文は、アメリカでの検討で医療事情がだいぶ異なり、単純に比べることはできません。しかし当院が大切だと考えている「動かして治す」ことの有効性が示されていると感じ、嬉しく思いました。

当院リハビリテーションでは、理学療法士と一対一でストレッチ、関節可動域訓練、筋力強化等に取り組んでいただいています。更に家に帰って継続していただくホームエクササイズを提案させていただいています。この流れを続けていただくことが、改善、回復につながると信じていますし、実際来院される方々を見て感じています。膝関節だけでなく、肩関節、腰、頸、股関節、足関節、つまり全身の「動かして治す」に取り組んでいます。「動かして治す」を試してみたい方、ぜひご相談ください。

藤沢ぶん整形外科は、地域の皆様の健康で楽しい暮らし、スポーツ愛好家の充実したスポーツライフを支える応援団です。

よろしくお願いいたします。

院長ぶん

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