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11/22 院内勉強会「肩関節周囲炎(五十肩)の病期別アプローチ」について

[2022.11.22]

こんにちは、理学療法士の高石です。今回は「肩関節周囲炎(五十肩)の病期別アプローチ」というテーマで勉強会を開かせて頂きました。

肩関節周囲炎(五十肩)とは、40~50歳代に多発する肩関節痛と運動制限を主訴とする症候群に与えられた名称のことです。「五十肩」(拘縮肩)の分類は、米国整形外科学会の元会長であるZuckermanらによれば、その原因から一次性(特発性)、二次性に分類されます。一時性は、明らかな原因が不明である場合です。二次性は、糖尿病や甲状腺機能異常と関連した全身性疾患、頚椎、肩甲胸郭関節、神経根症や脳血管障害に関連した外因性のものと腱板断裂、石灰沈着性腱炎など肩疾患に由来する内因性のものがあります。当院に来院される方の多くは、一次性である印象です。

肩関節周囲炎は、病期により大きく3つに分けられます。①炎症による「自発痛・安静時痛」や「夜間痛」を訴える炎症期、②安静時痛は改善し、機能障害による可動域制限が進行し、肩甲上腕関節包が固くなる「解剖・構造的破綻」を呈する拘縮期、そして③徐々に拘縮が改善してくる寛解期の順に経過します。

治療ではこの、①炎症期、②拘縮期、③寛解期の3つの病期に合わせて進めていく必要があります。

①炎症期では、患部の安静により炎症を抑え二次的な組織損傷や機能低下を抑制することが重要とされています。そして、この時期は病態の改善を最優先とし、肩関節に過度の機械的刺激を与えないことが最も重要です。このため、リハビリテーションでは強い痛みがでる日常生活動作を避けた生活の指導や制限を的確に伝えます。急性症状が強い場合は夜間痛により睡眠が障害される場合が多いため、患側の肩を下にしないことや、タオルやクッションを使った安楽肢位の指導をします。また、安楽肢位を妨げる肩関節後方構成帯や肩甲胸郭周囲の筋過緊張に対するリラクゼーションを行います。

②拘縮期では、関節可動域と筋機能の改善が目標となります。拘縮に至る可動域制限の機序として、過負荷による筋、腱板、腱板疎部等の損傷や癒着、および滑液包の炎症や疼痛のための不動による軟部組織の短縮、癒着などが原因となります。また、筋力の面では疼痛のため筋力が発揮できない、過緊張状態にある筋は筋力が低下する、痛みによる防御性収縮がある場合は拮抗筋の過緊張による伸張性低下が運動の抵抗になるなどが挙げられます。

可動域拡大と筋機能改善を目的として介入しますが、運動時痛がある筋に対して筋力強化は困難であり、早期に筋過緊張と疼痛を除去するために、筋や関節包に対して徒手療法にてリラクゼーションを実施します。その上で、ストレッチにより筋が本来持っている伸張性を再獲得し、筋力トレーニングで収縮性を再獲得します。肩関節は、多くの筋肉により制動されていて、一度固くなると、そのバランスが大きく崩れ、周囲の筋による代償が働きます。このため、筋機能を回復を図った上で動作を正常化していく丁寧なリハビリテーションが必要です。

③寛解期では、疼痛はほとんどなくなります。可動域の左右差改善、筋持久力の向上、さらにスポーツ活動動作への復帰を目指した機能改善を図ります。このために、反復した運動学習を主とした積極的なリハビリテーションを実施します。また、再発予防の観点から肩関節に負担がかかる日常生活動作を見直し、改善するADL(日常生活動作)指導が重要です。

今回の勉強会で、肩関節周囲炎の治療において、病期に合わせた的確なリハビリテーションを実施することの重要性を改めて学ぶことができました。

これからも、地域の皆様やスポーツ愛好家の皆様の期待に応えるリハビリテーションを提供できるよう、日々研鑽に努めてまいります。よろしくお願い致します。

理学療法士 高石

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