6/28 院内勉強会「肩関節障害における肩甲胸郭関節に注目したリハビリテーション」について
こんにちは、理学療法士の高橋です。
今回は、「肩関節障害における肩甲胸郭関節に注目したリハビリテーション」について勉強会を行いました。
肩関節は、骨性の安定性に乏しく、運動の自由度が高く、不安定な関節であることが特徴です。その安定には、肩甲下筋、棘上筋、棘下筋、小円筋などのインナーマッスル機能が重要です。このため、肩関節障害のリハビリテーションにおいて、インナーマッスルの機能改善は欠かせません。
一方、肩甲骨は肩関節の土台となる部分です。一部肩鎖関節〜鎖骨〜胸鎖関節と関節を介して胸郭、体幹につながりますが、胸郭への固定は、主に肩甲骨周囲筋(僧帽筋、大小菱形筋、前鋸筋、肩甲挙筋)により担われています。肩甲骨と胸郭の間の関係を一つの関節に見立てて、肩甲胸郭関節と呼びます。上肢の挙上や投球などの運動動作における肩関節の安定性には、肩甲骨周囲筋がしっかり働くこと、つまり肩甲胸郭関節の安定性も不可欠です。さらに肩甲胸郭関節の機能には、胸郭、体幹の姿勢や、肩甲骨の位置が影響します。このため、肩関節障害のリハビリテーションにおいて、肩甲胸郭関節の機能改善と胸郭、体幹の姿勢の修正は欠かせません。
インナーマッスルがしっかり働いていても、肩甲骨周囲筋の働きに不具合があったり、猫背など体幹の姿勢異常があると、挙上障害や痛みなどの肩関節障害につながります。このように肩関節障害の治療において、肩甲胸郭関節の機能や胸郭、体幹の状態を評価することが重要です。
肩甲骨の可動性評価、固定性を評価するテスト、胸郭の可動性の評価、体幹の機能評価などを行うことで、治療すべきポイントが見えてきます。
肩甲骨の固定性を改善するためには、僧帽筋下部の強化が重要です。僧帽筋下部は姿勢保持に大きく関わっており、肩こりの改善にもつながる筋肉です。
僧帽筋下部の強化のための運動療法として①ウォールエンジェル、②コブラエクササイズが挙げられます。①ウォールエンジェルは、壁に後頭部と背中を付けた状態でバンザイし、壁に手の甲を付けた状態のまま腕を上下する運動です。顔の横まで手を下ろし、また戻す運動です。② コブラエクササイズは、うつ伏せの状態から、足でボールを挟み込み、手は体側に置き親指は天井に向けるように肩を外旋させ、その状態で体幹を伸展させる運動です。僧帽筋下部の強化には、胸郭の拡張性と胸椎伸展の柔軟性が備わっている必要があり、それらの機能改善も並行して行います。
また、僧帽筋以外の肩甲骨周囲筋も含めたトレーニング、立位での壁押し体操や腕立ての姿勢での肩甲骨体操などもあり、負荷量を考えて行なっていきます。
これらの運動を自宅でも繰り返し取り組むことで、姿勢改善と肩甲胸郭関節の安定化に繋がり、肩関節の痛みや肩凝りの改善に繋がります。
最近、長時間のパソコン作業やスマホ操作で猫背姿勢でいることが肩関節障害につながっている方が多いように感じています。この猫背姿勢は、肩甲骨を外転させ、体幹部分を潰してしまい最も力が発揮しにくい姿勢ですので、普段から胸を張った姿勢をとるように心がけることをお勧めします。
当院では、高齢者、スポーツ愛好家、そして学生の方など、さまざまな方の肩関節障害のリハビリテーション対応をしています。
皆さまの力になれるようしっかり学び、リハビリテーションに生かしていきたいと考えています。よろしくお願いします。
理学療法士 高橋